アンコールワット旅行記(写真はすべてクリックで拡大します)


森林の中の遺跡、アンコールワット寺院です。今年1月、女友達と、一番安い、現地集合3泊4日のツアーを選んでカンボジアに行って来ました。カンボジアにはベトナムから入りました。乗り換えのホーチミン空港は小じんまりして、例えばヒースロー空港で乗り換える大変さなどから思うと、天国のようにのんびりしています。空気は熱く、この辺から、もうアジアな感じ。カンボジア、シェムリアップ空港に着くと、打ち続く戦乱で治安が悪いと言われていたにしては、おっとりしていて落ち着きます。


14世紀カンボジア、クメール人の神秘的なアンコール王朝の遺跡群は大小数百を数えます。

 寺院は行ってみると、(映画の「ツウムーン」などから想像される東洋の魔術、といった派手なものではなく)、静謐な明るい所です。寺院に辿りつくには、沢山の階段を登らねばなりません。凄く印象的な階段で、傾斜が絶壁に近いので、登り始めは下を見ないほうが良いかも。寺院は美しい回廊にかこまれ、精巧なレリーフで飾られています。

バンテアイ・スレイの花を持つ女神デヴァター;フランスの高名な政治家であり文筆家であったアンドレ・マルロー氏が当局に隠してフランスに持ち帰ろうとまでした、東洋のモナリザと呼ばれる女神像を見ることが、私のこの旅のクライマックスでした。果してそれは、「ファム・ファタール」のような雰囲気のものなのでしょうか?この写真一番奥(これ以上中に進み入ることは禁じられています)がその「東洋の、、、」と教えられたのですが、案外あどけないふっくらとした少女のように見えます。アジア女性らしい華のように豊満なからだのデリケイトな丸みと衣服の線が精緻に描き出されているところがマルロー氏の気に入ったのかも。

バイヨンの微笑

アンコールトムの中に入るとこの微笑を浮かべた仏陀に取り囲まれる。
元祖ド根性大根

こうした荒廃から遺跡を救うため日本を始め世界各国から援助が入っているらしい。
象のテラス

後ろ、3本垂れているのが象の鼻で300メートル続きます。テラス背後の宮殿から出てここで象に乗ったようです。

アンコール・トムには、三島由紀夫さん所縁の「ライ王のテラス」もありますがとばします。


アンコール王朝の人達が象を愛用した跡はいろいろあります。
さて、私たちも象に乗りました。アンコール遺跡をみはらして夕日が沈むのを見る小高いスポットに、象に乗って連れて行ってもらうことになりました。その以前、乗ったことがあると言う外人と、この話をしていて、彼がstationからget onして、と言うので、不思議に思っていたのですが、分りました。櫓のようなstationが造ってあって象の背にはちゃんとベンチが在るのです。


丘の上では世界中の人種が入り混じっているようで、みんな日没の瞬間をカメラに収めようと場所取りをしています。オレンジ色の法衣を着た坊さんが、絶壁に腰掛けていて、横を空けて招いてくれたので座って、何処から来たの?と言う様な、お決まりの英会話を交わしていてふと、「義足の人をよく見かけてお気の毒です」と言ってみましたが(登ってくる道傍にエル・グレコのマリアそのもののように綺麗な小さい少女の物乞いがいて、参ったなー、と思っていたのです)「ああ、爆弾でね、、私のおじも、いとこも爆弾でなくなりました」と,呑気そう。見回すと、ドイツ語、イタリア語などが入り混じって皆のんびりと崖に座って足をぶらぶらさせて夕日を見ています。

シェムリアップの街は、建物の装飾もどことなくフランスのアールヌーボーの面影を残していて楽しい。大人も子供も皆スリムで、小柄で、裸足で歩いていて一日の平均収入は1ドルとか。
国道沿いの民家。裕福な家です。 客待ちの人力車 義足の人達で、バンドを組んで、道端でカンボジア音楽のパホーマンス中
子供たちがキュートなのが印象的でした。私の写真は上手く取れていませんが、大きなダークアイに黒髪、とてもデリケイトな顔立ちで笑うとキャットスマイルになります。


学校も足りなくて2部制、奥で授業をしていて、自分達の授業の番を待っている子供達。


孤児達の施設。このアトリエでは、孤児たちに、伝統の影絵風の工芸品を作る技術を教えながら、観光客に即売もしています。この男の子も孤児で下絵を受け持っています。デッサンが大人びて美しいのに、驚くほど素直な子供でした。

旅行後、神戸在住のカナダ人オーエンさんと話していて、「カンボジア人をどう思った?」と、きかれたので「ジェントル」(私は、「おとなしく上品」、と言う意味で使ったつもり)と答えると「そうそう」、と急に乗り出してきて、なんでも彼は、クリスマスからお正月にかけては東南アジアや暑いところで過ごすらしいのですが、その彼に言わせるとカンボジアの人は行った何処よりもジェントルなんだそうです。物売りの子供達もエジプトなどと違うよね、と力説していました。お料理も美味しい、インドネシアほどにはホットでないし、だそうです。


カンボジアの特産は胡椒、絹といったところらしいです。私が買ったこれは、店の人が骨董品といって薦めるもので、阿片を吸う水煙管だったものです。昔シナの苦力は阿片を飲みながら死を迎えるのを望みに、懸命に働いてお金を貯めたといいます。上海に近い周荘という所には、今も阿片屈の建物が残っていて観光客にも見せているときいたことがあります。19世紀、ロンドンやアメリカにも阿片屈は在って、ヘンリージェイムズの小説「鳩の翼」や、映画「ワンスアポナタイムインアメリカ」などでは白人も阿片屈を使っていたところが出てきます。そういう煙管は木製でしょうが、この陶器の水煙管は、権高で美しい貴婦人の細い指がキセルをまさぐった様子を想像させて小説を読んだような気持ちにさせられます。

又、前にマカオに行った時これだけは覚えた料理、ポテト・ポルトギッシュ(ジャガ芋の粉ふきにおいしい胡椒をどっさりかける)がありますが丁度今の時期、カンボジアのおいしい胡椒と日本の新ジャガを使ってそれが作れました。お庭のしだれ桜を見て、食べながら、旅を思い出すのも良いものです。

アジアといえばマルグリット・ヂュラスやモームの目を通じてしか考えられなかった私ですが、この旅行でアジアンな生活の原型をちょっぴり見てしまった感じで素直に嵌りそう。日本が寒くてたまらない季節には、又行ってみようかなと、思っています。
                   
          井口 光(写真の一部は山嵜義昭さんの撮影)

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