2009.10.17 田中信昭   

船旅の自由帳24〜モロッコ

10月16日朝予定通りモロッコのカサブランカに着岸。マラケシュという古い街への1泊2日のバスツアーに出かけた。今日は早朝6時からの太極拳でようやく日の出を見られるようになり、普通の時差に戻った。というのは今までのスペインが無理してユーロ圏の時間に合わせようとしているのと、いわゆるサマータイムのため、日本との時差が2時間半ぐらいずれており日の出が8時半位だった。昨夜2時間遅らせる時差調整があったので、一日が26時間になり長い夜であった。さて、、

 

マグレブの世界遺産(日出ずる国から日の没する国へ)

地中海のアフリカ側の3つの国、チュニジア、アルジェリア、モロッコはマグレブと呼ばれ、20近くの世界遺産がある。マグレブとは「日没の地」だそうで、北アフリカの先住民・ベルベル人が住んでいた所がアラブ化、イスラム化した文化。それに南のブラックアフリカと、フランスの植民地であったことからそれらが混ざり合った独特の文化圏になった。フランス語が話されている。

マラケシュ

カサブランカから南南西240km、アトラス山脈の北側の丘陵地帯に人口約70万人の古い街がある。カサブランカ、ラバトに次ぐ第3の都市。南には北アフリカの最高峰トゥブカル山(4165m)が聳え山脈を越えれば広大なサハラ砂漠!きっと砂漠を渡って来る隊商の交易地として栄えたのであろう。郊外にはオアシスが点在。この街の城壁で囲まれた旧市街(メディナ)が街ごとそっくり世界遺産。12世紀日本でいえば鎌倉時代の建造物が残る。広大な草原をバスで5時間もかかってようやく今宵のホテルに到着。街の建物は全て赤味掛った黄褐色に統一されており、これはこの土地の土の色、これから焼いたレンガで建てられていたもの。新市街地の方は鉄筋コンクリートで建てられたビルやアパート群が多いが壁の色は全てこの色で塗るよう規制されているそうで、とにもかくにも黄土色の世界。ホテルは立派なリゾートホテルで大きなプールを備え、沢山のフランス人が保養に来ている。

期待のフナ広場

先ずは「世界無形遺産(第1号)」のジャマ・エル・フナ広場へ。辺りはもうすっかり暮れて暗い中にこの地域最大のモスク、クトゥビーヤがライトアップされてきれいに浮かび上がっている。進んでいく最中もガイドはとにかくスリが多いからくれぐれも持ち物に注意と繰り返す。ずらりと観光の馬車が並ぶ脇を通っていよいよ広場へ、馬の糞の臭いが強い。観光客がものすごくごった返している。

大道芸人が集まってきていて色んな芸を見せてくれこの賑わい全体が世界遺産(無形)の第1号に今年選ばれたばかりということで大いに期待して広場の中へ進む。暗くて芸人たちの方はあまりよく見えない。先ずは煌々と明かりの付く屋台の方を見て歩く。羊の頭、脳みそが並ぶ肉屋の前には大勢の客が腰かけて食べている。新鮮そうな果物、香辛料、ドライフルーツなどが所狭しと、しかし整然と並べられている。とにかくカメラを向けて写真を取ると「ノー」と怒られるか、金を取られるかだと脅かされているのでシャッターを押すにもいちいち気を使う。何か貝が山のように盛られている屋台の周りの西洋人と思しきアベックがいたので何だかちょっと安心した気分になって、側に腰かけて聞いてみた。どこから来たの?ポーランドからだという。これは何?−エスカルゴだと判った。少し濃い目の醤油味に似て旨かった。

これが世界遺産?!

目当ての大道芸人たちはどこにいるの? 暗い方へ恐る恐る進んでいいてみた。蛇使いがコブラを笛で躍らせている。カメラを向けるとさあカモがきたとばかり張り切って笛を吹く。用意していた小銭10ディラハム(120円ぐらい)コインを渡すがもっとくれとせがむ。逃げると追っかけてくる。面倒だからもう10渡して退散。取り巻いている人は只見ているだけで、写真を撮らなければ無料らしいことが判ってきた。写真を撮りたい観光客が来るのを只みているようだ。猿回しの猿が肩に乗ってきてこれを同行者に写真撮ってもらったらそれでまた10ディラハム。竿の先に輪っかを付けて瓶釣りをさせている所あり。日本の夜店の屋台じゃあるまいし。薄暗がりにベールを付けた女性が腰かけている。手にカードのようなものを持っているからきっと占い師なのだろう。中にタトゥー(刺青)をする商売の人がいたのかもしれないが、何せ薄暗がりで怪しげで気味悪く落ち着かなかった。それにしても芸を見せてくれる人いないの?お金は払ってもいい。明るい屋台と暗い大道芸。

ハーレム

迷路のような旧市街の中央に「バヒーヤ宮殿」というかつての王宮がある。王様はまだ子供だったので摂政が権力をふるっていたらしいが、4人の夫人と大勢の女性を侍らせていたハーレムの中を見学した。女性は外に出ることがないので、散歩のための中庭の緑が充実していた。壁や天井のアラベスク模様が見事。床のモザイクやイタリアから運ばせた大理石もきれいだが、イスやベッド等の家具がない。絨毯だけ?古代ローマの遺跡と違って日常生活がイマイチ想像できない。これがまさしくハーレムなのだが、思いの外、ちょっと狭いなあという感じであった。

スーク(市場)

これは大変に面白かった。横幅5mぐらいか、細い入り組んだ迷路のような道の両側はぎっしり並んだ商店街が延々と続く。肉や果物、香辛料等の食べ物屋あり、なめしから染色、加工までやっている革製品の店、アラジンのランプのような明かりを売っている店、鍛冶屋通りもある。店でトンカチ片手に作業をしている少年がふとこちらに目を向けたのでシャッターを押した。そしたらマネー、マネーと言って追いかけてくる。ポケットを探りながら1ドル札を出そうとしてひょいと20ユーロ札が出てしまった。彼はおつりを取りに戻ってなお付いてくる。辛うじて無事ワンダラーで事を収めるのに5分も歩きながらの交渉(?)カメラを向けるとノーと怒る者、気さくに話しかけてくる者、撮らせて金をせびる者。行き交う女性はベールで顔を覆っている。眼だけしか出していない人も。アフリカとヨーロッパが交錯する街、モロッコのマラケシュだった。

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