2009.10.08 田中信昭   

船旅の自由帳19〜ドブロヴニク

ギリシャのアテネを1日で終わって、6日の夜には早くもピレウス港を出港。船はバルカン半島の先のペロポネソス半島(ギリシャ)の沖合を回ってアドリア海に入り、本日8日午前10時にクロアチアのドブロヴニクに到着。「アドリア海の真珠」とよばれている。このクルーズに参加することを決めるまで、実は正直こんなまるで{どぶろく}のような名前の世界遺産の町があるなんて全く知らなかった。サラエボで(冬季?)オリンピックがあって後、激しい戦争があったことは知っていたが。

“ドブロヴニクを見ずして天国を語ることなかれ”有名な劇作家で皮肉屋のバーナード・ショーが

1929年に訪れた時の言葉だそうだ。ボスニア・ヘルツェゴビナの南の海岸沿いに飛び地のようにして美しい要塞都市があり、城壁で囲まれた旧市街が全体として世界遺産に登録されている。

世界遺産としての“Dubrovnik

洋上の英語講座GETのクラスでも何回か勉強したので、街全体がとても美しい所だと馴染みができていたが、果たして今回の短い1日ツアーでどこまで見られるか心配しながらも大いに期待していた。1978年に初めて世界遺産なるものが登録され最初は12か所であった。このドブロヴニクは実にその翌年1979年に世界遺産に登録されたそうだ。その後ユーゴスラビアの内乱があり、1991年まさかと思われたセルビアによる空爆でこの街は破壊され、世界中を驚かせた。凄いのはその後で、戦後、世界中の援助と市民を上げての復旧工事で見事に再建され世界遺産に再登録されたのだそうだ! 蛇足ながら、絵画や彫刻のような簡単に動かせるものは世界遺産にはならないそうだ。例外として「最後の晩餐」は壁画だけれど世界遺産だとか。

この街には古代ローマの皇帝の別荘としての宮殿もあったというからその歴史は古いが、現存する建物は15世紀以後のものが多いようだ。

旧市街散策

港を離れたバスは海沿いに切り立った丘を登ってビューポイントへ。雲一つない青空、紺碧の海、

そして眼下に見える小じんまりとした旧市街にぎっしりと並ぶ赤褐色の屋根!これだ、これだ、憧れてきた風景は!懸命に写真に収めようとするがこの美しさを切り取るのはなかなか難しい。

「ピレ門」というメインの城門から旧市街地に入り、立ち並ぶ聖堂や修道院の建物ときれいなショップがバランスよく配置されたメインストリートを進む。5、6階はある建物の間に狭い路地があり、背後の丘の方まで道が続いている。その片側はおしゃれなカフェかレストランになっている。このプラツァ大通りはやがて海に突き当たるがその手前のルザ広場に時計塔がいかにもシンボリックに建っており、1時間ごとに時を告げる鐘が鳴る。驚いたのはこの城壁で囲まれた世界遺産の街の中に今も現に人々が生活している。この街には17世紀ごろから続く薬局があり、現在も薬博物館として大切に管理されているばかりでなく、現に薬を作っている。ヨーロッパの薬学はここドブロヴニクに始まるのだという。町は見事に修復されており建物の壁には古い大理石と少し色の異なる石の部分があるが、いずれにせよ人々が瓦礫を拾い集めてそれを組み上げて修復していったのだという。修道院の壁には弾痕が残り、壁画は惜しくもあちこち焼け焦げたり剥げ落ちたりしていた。屋根も破壊から逃れたものは黄褐色で、新たに修復された所は赤褐色。あとで城壁から見下ろすとぎっしり並ぶ建物の屋根はその殆どが赤っぽかった。

昼食

海辺のレストランで待望のシーフード、パンもワインもサラダも白身魚のムニエルもみんな旨かった。久しぶりに本格的なおいしい食事をゆっくり味わったことであった。そういえばこのクルーズに出てからまだ一度も旨い本格的なステーキを食べてないなあ。肉と言えばケバブのようなものばかり、日本のうまい寿司も食べたいなあ。

城壁めぐり

町を取り囲む石造りの城壁には昇って一巡りすることができる。まあそこからの眺めの素晴らしいこと!紺碧の海と大砲を備えた要塞。成程海から攻めてくる敵から守るために築かれたことが良く分かる。周辺の岩山の景色はBC5世紀ごろのままだと聞かされた。というのは元々木が少なく、辛うじて栽培したオリーブとブドウだけが緑として岩山の白とコントラストをなしている。赤い屋根と屋根の間には所々洗濯物が長いロープに吊るして干されていた。日常の買い物もここまで運びあげるのは大変だろう。緯度的に丁度北海道と同じだが、気温は25度ぐらいで、しっかり歩いたから汗ばんだ。

遊覧船で一巡り

フリータイムを利用して5、6人で小さなグラスボートに乗ってみた。50分で沖合の島の向こうを一巡り、10ユーロ(¥1400) 旧市街だけでなく、沖から眺める全体の町の眺めも素晴らしく、海岸沿いにはビーチはないが岩場の海を天然のプールのようにして奇麗なリゾートホテルが立ち並び、青く澄んだ海で泳いだり、岩場に上手に設えられたテラスでのんびりくつろいでいるヨーロッパ人が大勢いた。東洋人らしい人影は見当たらない。島の裏側の岩場には完全ヌードの人たちの姿もあった。

ヨーロッパ人には有名な観光地なので、物価は少し高めだが、こういう所でのんびりと1週間ぐらい過ごすのもいいな、船が着いてからの半日の駆け足ではなく、、過去にここに来たことのある人は口を揃えて、又行きたい所としてここドブロヴニクを挙げる。聞きしに勝る好印象の旅であった。

それにしても船の旅というのは本当に楽でいい。次から次と素晴らしい所へ連れて行ってくれて、全て段取りされたバスに乗っかって案内され、食べさせられ(!)その上ホテルが一緒に付いてくる!

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