主題;火星の現状から、地球の将来を推測する
                                                      堀北隆司

<第2回>

前回は、火星に昔海があった、しかしそれが何時どこへ消えたかは判らない、と言うことと、地球上の生命体の歴史の概略を述べたのですが、今回は火星の海の水と大気の行方について及びこのことを拡大して、推測を含む勝手な私見を述べてみたいと思います。

(以下に述べることが、他の場所、他の人により既に言われているならば、私の情報把握力の至らなさをお詫びします。)
 

まず、火星の海水の行方について、私は以下のように考えます。

()「火星地殻内での核分裂活動が終焉に向かい、内部のマントルとマグマの冷却固化が始まり、熱収縮クラックが生じて、地表にある海水が地表と地殻のクラックに浸透し始めて、地表の水位の低下が始まった。」ということ、

http://www.es.jamstec.go.jp/esc/research/Solid/members/kameyama/c3m/index.ja.htmlマントル

及び、

()「火星内の地殻などの冷却収縮とクラック生成がさらに進み、地表の液状の水分が火星重力と浸透圧によりそのクラック内に浸透して、火星内の地下数千キロの奥深くに閉じ込められた状態にある。これが火星地表にかつて存在した水の現状である。しかし、その過程においても、その頃既に極地付近を含む、陸上に凍結して存在していた氷とドライアイスは、固体のまま現在も極付近に存在している。」との二つの仮説です。

 極地以外の、現在地表近くに永久凍土として存在する水は、たまたまその場所で、凍結していた氷か、湖か池として存在していた水が、地殻部に浸透する間もなく、地表大気の圧の低下とともに、気温が低下して地表で凍結したのであろうと考えられます。だがほとんど全ての水は海にあったはずで、海の水は地殻内に深く浸透したであろう、ということです。

http://www.astroarts.co.jp/news/2004/03/20mars_express/index-j.shtml;極地の氷とドライアイスの存在

さらに、

()「火星の海水位の低下の始まりは、海水の地殻クラックへの浸入の開始時期であり、これはオリンポス火山の最終噴火が5億年前だとすれば、それ以後地殻の冷却固化が始まり出した時期であり、地殻の冷却は今は既に完了したか、進行中であっても人がそれを地上に取り戻すには、深く浸透してしまった状態にある、といえよう。」と考えます。

 さらに、火星の大気については、

()「火星の大気は、初期の地球や今の金星のように、海水に若干の二酸化炭素が溶融しても1気圧以上はあったと思われるが、水が浸透した経緯と同じように地殻のクラックに浸透し、今は地表上には微量の0.01気圧程度を示す大気しか残っていないのであろう。」ということが推測できます。

同じ論拠から、水星、冥王星、月など地球型惑星と衛星、木星、土星、海王星などの巨大ガス型惑星の衛星にも上の推理を拡大して、同じことが言えるであろうし、特に月については以下の考えもあると思います。

()「月表面極地に多量の氷がある」と最近NASAの発表がありましたが、ということは月にもかって水が存在していたことになります。さすれば月にも大気も存在していたといえると考えられます。極地の氷以外の月の水と大気は、重力が小さい故に一部宇宙に拡散してしまったものもあるかもしれないが、火星と全く同じように月内部のマントル、マグマ、中心部の地殻などの冷却固化の進行とともに、地殻のクラック深くに浸透してしまった結果、現在月地表には存在しないのであろう、ということだと思います。

月は体積が地球の1/60であり、火星は1/10です。重力にこのような差があると、地表に留め置ける気体の種類と総massにも大きな差が出ることは、止むを得ないでしょうが、水が在った以上窒素、二酸化炭素などは分子量からも月誕生以後、月面地表に滞留存在していたことは十分可能性ありと言えるのではないでしょうか。

http://www.cosmo-oil.co.jp/kankyo/dagian/37/11.html 月の大気

上に述べた()()までの仮説の論拠を、地球の例で以下に若干定量的に述べます。

地球内部の熱収縮が終ったとき、地球内部には地球体積の69%程度の容積のクラックが生ずるでしょう。地球上の海水の体積は、地球体積のわずか0.10.2%程度であり、地球の地殻に生ずるクラックが、海水を飲み干すには十分過ぎる容量といえます。
 またNASAによると、火星には川があったと言うことです。このことは火星表面が全て海水に覆われていたのではない、ということでもあり、これは火星の体積と海水の体積比が、地球のそれらの比とorderとしてはほぼ同じだと言える根拠にもなり、火星の地殻クラックに火星の海の水が浸透しつくしてしまったはずである、という推定が成り立つと言えると思います。

このように地球のparametric dimensionを、太陽系隣の火星に押し広げて考えることは許されるだろうし、地球の体積と海水の体積比を、そのまま火星に当てはめて考えることも大きな間違いは無いと言えるでしょう。

現在火星地表の水分が、極地の冷凍状態のものと大気中に微量の水分以外に存在が認められないこと、及び大気が極めて僅かな気圧しか示さないのは、この主張の傍証となると言えるのではないでしょうか。

http://www.geolab.jp/Feel&Think/FT_kino09.html 岩石の膨張率

http://sales.moritani.co.jp/zima/topics3.html    金属の膨張率

http://www15.cds.ne.jp/~ant/labo/solarSys/distance.html 惑星の大きさ比較

http://universe.chimons.org/contents/realize.html    惑星の大きさ

火星地表に存在する太陽系最大の火山だと言われるオリンポス火山は、5億年前の噴火を最後にして、今は死火山であると言われています。火星内部のマントル、マグマの活動はそれまでは活発に生きていたと言えようから、マグマの縮退による地殻クラックの成長はそれ以後のものであり、海水の地殻進入は地殻クラック成長とともに始まり、5億年経た今はそのような動きも収束しているか、収束しつつあり中心付近まで凍結した死の世界になっているであろう、とこれは上に述べた仮設の一部の再主張ですが、このことを以下検討してみます。

http://www.google.co.jp/search?sourceid=navclient&hl=ja&ie=UTF-8&oe=UTF-8&q=%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%83%9D%E3%82%B9%E7%81%AB%E5%B1%B1

;オリンポス火山の説明

火星にしろ地球にしろ、自然現象である火山活動がある瞬間階段状(不連続)に休止することはありません。火星については、生成以来の総顕熱が宇宙へ放散され、核分裂物質が消費されて、火星が持つ総熱エネルギーが減少し、熱レベルが徐々に低下したのでしょう。それに従って、マグマ外周が火星内部に後退することにより、地表近くにあった火星の外殻は温度低下による体積収縮が起こり、そこにクラックが生じて海水が浸入し、そのクラックが中心に向かって成長してゆくとともに、海水も火星中心に向かって浸透し、冷却は加速度的に進行したのだろう、と推測できます。これは主として海底の現象で水に関して言えるこのことですが、大気も、水と同じ運命をたどったであろうことは容易に推測できます。即ち海水が減少して地表が露出するにつれて、また陸上のクラックの成長とともに大気も火星内部に侵入して行ったのでしょう。
 以上要するに、火星の水のほとんどは現在地下何千キロもの火星地中深く、冷え切ったマグマと共に存在しているはずであり、地表の水は僅かに極付近の氷か、地下浸透が間に合わなかった湖沼の水が、地表付近の永久凍土となって存在しているに違いない、と考えられます。 

また大気も火星内部に出来たクラックに入り込み、地表には極付近のドライアイスと、微量の大気圧を形成する地表の大気として僅かに残っている程度なのであるといえると思います。

http://www3.justnet.ne.jp/~hagiya/mizu8.htm 火星の大気

http://www.env.go.jp/earth/cop3/kanren/kaisetu/11-4.html 惑星の大気

3火星のテラフォーミングについて
 現在火星のテラフォーミングという、地球化計画が考えられているようだが、その動機は、地球の温暖化とその後の氷河期と及び地球の汚染から逃げ出し、行き先に火星を考えていると言うことのようです。またその内容として、火星の水と大気を、過去のように地表に戻し、植物を地球から移植して大気を地球のように酸素リッチにするというものです。  

学者たちは国際的な会議を持って議論しているようです。

私は、ここに述べているように地中何千キロも深く、地殻のクラックに浸透して凍結している水と、同じ場所にある大気を地表に戻すことは不可能であり、しかもその地殻の空隙の容積が、かって地表に存在した水の体積の数十倍もあるとすれば、地表に海や湖を造りだすことは、さらに不可能なことであろうと考えます。

人類が火星に移住して生きてゆくことなど、無駄な研究は止めるべきであり、地球から逃げ出すことを模索する暇があるなら、地球の汚染を食い止めることを真面目に考え行動を起こすべきである、とそんなことに取り組んでいる学者に言いたいものです。

http://homepage3.nifty.com/iromono/kougi/ningen/node87.html テラフォーミング

http://contest.thinkquest.jp/tqj2000/30307/terapho.html    火星のテラフォーミング

4地球未来の推測

上記火星の水と大気の現状への推移は、次は地球に起こる可能性が大きいとも言えるでしょう。地球は内部に核分裂の原子炉を持つ、核爆弾型の火の玉の惑星と言われています。 

一方太陽は水素の核融合の、水爆型の火の玉でもあります。

地球の中心部の原子炉部分は、地殻が6000度近い金属成分と固体マントル層で、地表に近い場所でも千数百度以上の溶融マグマ状態にあるので、海底地表にある海水はマグマと接している場所もあるが、高温のマグマに押し返されて、地球内部に浸透することは出来ないのです。

地表で海水水位が保たれているのは、このように地球内部へ海水が浸透できないが故だと思います。もし火星に起こったように、地球のマグマの温度低下や固化が起こるとすれば、これは地球内部の(顕)熱ポテンシャルの減少、即ち核分裂活動の縮退によるマグマ活性の低下、即ち地球内部の全熱的ポテンシャルの低下であり、大陸やプレートの移動、造山地震活動の低下を意味します。

このことはマグマの温度が低下し、海水が地球内部に浸透しようとする圧力に抗する作用が低下して、マグマの冷却固化、地殻の収縮によるクラックが成長し、地球表面の海水が地球内部、地下数千キロまで浸透して、やがては地表から水が消えてしまうことの始まりを意味することだと思います。
 このような現象が起これば、水と共に地下に進入できる単細胞的な微小動植物が、地下深く進入して生存する可能性があるかもしれませんが、地球表面に居る、太陽と水の存在を前提とする植物と、その植物を利用して進化の先端に居る、哺乳動物を含む脊椎動物はじめ、複合細胞の大型生物などは生存できないであろうことは容易に想像できます。

マグマ活動の低下により、地震が無くなる事は望むべきことかもしれないが、地表の水が干上がることにもなり、地表の全ての生き物が死滅することになるのでは、あまり望ましい事とはいえないでしょう。

5地球内部の冷却固化の始まりは何時ごろか。

地球と火星の体積比は1;10ですが、核エネルギーや惑星生成過程の顕熱などの貯蔵量と今までの放散量、残存量も火星との体積比に等しく推移してきたとすると、火星が冷え始めたのが5億年前であれば、四十数億年の冷却過程にある地球内部の固化が既に徐々に始まっているのかもしれないし、そうでないにしても何時始まってもおかしくない状態にあり、長く見積もってもあと数億年先には始まるでしょう。

即ち、あと数億年のうちには海水の地球内部への浸透が始まり、地球内部の冷却が加速し、地表の生命の絶滅が始まるといえるのです。これは太陽の赤色巨星化やアンドロメダ銀河と銀河系の衝突よりはずっと早く起こるはずです。その頃には、我々は私は生きていないであろうし、その劇的変化を現認できないのは残念でもありますが。

6雑感(その他の疑問、勝手な推測)

・地球は内部がドロドロに溶けた溶融状態のいわば生卵状態でしょうか。生卵とゆで卵を回転させたらよく判るが、ゆで卵は回り続けるが、生卵の場合すぐ止まります。これは、生卵の中の液体が、個体である殻の自転運動と同じ回転運動が出来ないため、殻との間及び液体相互間に固着摩擦が生じて、回転運動が急速に減衰してしまうからです。

太陽や月の重力の影響を受けている地球は、内部が液体かドロドロの溶融状態なら、生卵現象で自転の角運動量がすぐに減衰し、その自転周期を長くして(一日が長くなって)ゆくはずです。しかし地球の自転周期は大きくは減衰していません。これは、地球内部はドロドロの溶融状態ではない、ということを示しています。

即ち、地球の内部の金属や岩石はマントルといわれて数千度の高温ですが、地圧により融点が上がっているため固体状になっており、地表に近い部分のみ地圧が低くなって融点が下がり、溶融マグマになっていると言うことらしいです。
http://contest.thinkquest.gr.jp/tqj2000/30295/mechanism/earthquake/mantle.html マントル対流

http://www.nagare.or.jp/mm/99/matsumoto/index_ja.htmマントル対流

一方月は、それが誕生した頃は内部が溶融状態で、地球の重力で引っ張られて徐々に自転周期が長くなり、圧倒的に大きい地球の拘束重力で地球の方向に引っ張られ、完全に内部の冷却固化が終わる前に、自転周期が公転周期と一致してしまい、結果的に現在のように、自転周期と公転周期が同じになってしまった、といえるのでしょう。

しかしそうは言っても、地球に剛体の棒でつながれているみたいに、裏を見せることはありません。あまりにも見事です。上に述べたように月と地球の質量差が大きいとしても、このようにピタリと一致することは、摩擦系を共有しない天体の運動としては、理解に苦しむものであり、これは、神がなされた一大マジックだと考思うのは私だけでしょうか。

・太陽や月の重力の影響を受けている地球は、その質量が水星や月に比べて非常に大きいため、内部マントルの融点が地圧により上がり、固体化してゆで卵状態になっていると言われています。

しかし、固体であるマントルが大部分を占めていて内部がゆで卵状態だとしても、地表近くのマグマと表面の海水は地球自転により、何億年もの間、干満状態を作り出して粘性摩擦運動を繰り返しているのだから、地球自転の角運動量を徐々に減少させているはずです。長期に亘っては、地球自転周期が長期化している方向に作用していると考えられます。すなわち、現在も確実に自転角運動量は徐々に減少している(1日の長さが長くなりつつある)はずです。

・話は変わりますが、ヒマラヤ山脈はインド半島のプレートがユーラシア大陸プレートに衝突して、インド半島がその下に潜りこんで競りあがり、今も高くなりつつある褶曲山脈であると言われています。このことはヨーロッパアルプスも同じ歴史であるようです。

従ってヒマラヤには1〜2億年以上前に海底に沈んでいた、アンモナイトやべレムナイトなどの化石がごろごろしていると言うことです。元気なら何時か見に行きたい所です。

 米国西海岸、ロスアンジェルスの空港に到着する前、機上からロス付近の山脈が鮮やかに、南北に褶曲してできている様子を見ましたが、ロッキー、アンデス山脈が西から太平洋プレートで押されて競りあがったこともこれを見て納得したものです。

http://cacao55.fc2web.com/sub5.html ロッキーパージェスでのカンブリア大爆発の化石と生物の5大絶滅                

http://www.ishi-shop.com/kaseki01.html ヒマラヤのアンモナイト

http://web.infoweb.ne.jp/minecity/park/kaseki/ka_0713.html 日本のアンモナイト

・大古の昔(2〜3億年前)、地球上の大陸はパンゲアという大陸が一つだけだったらしいのですが、それが5大陸に分割移動して現在の地球上の大陸になったと言うことです。

 http://cacao55.fc2web.com/sub6.html 太古の海

・高校時代、人文地理の宮崎先生が、ウェーゲナーの大陸移動説なる話をされました。地球上の大陸は移動している、その証拠に南米の東海岸とアフリカの西海岸は分離したので同じ形である、と言われました。その頃はそういう説もあるという程度で、断言はされなかったように覚えています。ウエーゲナーは1910年にこのことを主張していたようですが、大陸移動のエネルギーが地球内部の核反応の熱によるマントル対流であり、プレートテクトニクスの現象だということまで当時は考えられず(当然ですが)、月や太陽の重力説をとったため説得力がなかったようです。

戦後に発見された海底火山活動と、ハワイの島々が小笠原諸島方向への移動していることなどが、海洋探査技術の進歩により戦後続々発見されて研究が進み、大陸移動説は1970年前後に論拠が確立し定説化し、冒頭に述べたヒマラヤのアンモナイトも、その頃に説明がついたようです。宮崎先生の話を聞いたときは、荒唐無稽の感だったのですが、今はこれを疑う人は居ないと思います。

ハワイ諸島は小笠原諸島の方向に移動しているようです。人間の髪の毛の成長速度で大陸が移動すると、1億年で15000キロメートルになり、これは日本からロンドン迄以上の距離になります。億という数字の年月は、人間の想像を絶するほどのことがなされるものです。人類誰も見たことが無い、遠くの過去や遠い未来の地球や宇宙、はるか遠くの宇宙にタイムスリップして、その中で逍遥することも結構楽しいことです。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%83%B3%E3%82%B2%E3%82%A2%E5%A4%A7%E9%99%B8  パンゲア大陸

http://www.fukuoka-edu.ac.jp/~uenot/UCHUCHIKA1.html 大陸移動説

http://www.k-net.bosai.go.jp/k-net/gk/publication/1/I-1.2.1.html プレートテクトニクス

 無責任な話にお付き合いくださって、ありがとうございました。

<終わり>


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