植物毒物語第4回 毒婦


私達が使っている言葉の中には、日常的にはなんの気にも止めないで使っている言葉でも、気が付いてみると訳の分からない言葉が結構あります。毒婦もそんな言葉です。遠くは、高橋お伝や阿部定、近くはサッチ−のような女を毒婦といい慣わしています。 毒は、医学や薬学上は「人間」に対して害をなすものを指していますので、毒婦の出す毒もまた、人間に作用するものとなるでしょう。毒婦の持つ毒は、女に作用するとは考えていないようですから、人間はつまり男ということになります。「毒夫」と言う言葉を作らなかったのは、まさか、取り立てて毒夫というまでもなく、男は皆な毒を持っていると考えていた訳ではないでしょう。あるいはその反対に、男は誰も毒を持ちえないことを指している訳でもないでしょうし、また男は毒を持ちたくとも持ち得ないことを含んでいるとも思えません。 世の中の常識的な考えの中では、女だけが毒を持っていることになっています。

毒婦なんて言葉、誰が作り出したのでしょうか。毒婦と言う言葉を作った人の狙いは、なんだったのでしょうか。 毒婦と言う言葉を創作した人は、女は毒を持っていると考えていたのでだとすれば、そんな考えを持っている人(恐らく男)とその配偶者との間に生まれた子は、なんという生物になるのでしょうか。 ホモ・サピエンス・トキシコイデストでも言うのでしょうかね。 毒婦と言う言葉は、なにやらよからぬ意味を込めて作られたように見えます。 毒婦という言葉は、毒のもつイメージを流用していることは確かです。毒といえば薬です。薬は健康に結びつき、良いイメージが伴っています。 毒婦がいるのに、何故薬婦はいないのでしょうか、アゲマンはいるにもかかわらずです。

 薬と毒は善と悪、まるで、鞍馬天狗と木っ端役人の如き観がありますが、漢方に使う植物は毒にも薬にもなるわけで、毒という言葉は極めて人間サイドにたった恣意的な言葉です。漢方に使う植物だけが毒(薬)を持っているのではなく、全ての植物が何らかの毒をもっています。植物毒の多くが、アルカロイド(alkaloid)といわれる物質の一種です。華岡青洲が使ったトリカブトの主成分であるアコニチンやマンダラゲのスコポラミン、ヒヨスチアミンもアルカロイドといわれる物質の一種です。アルカロイドは植物塩基とも言われた時期があり、アルカリ様の物質と言う意味です(アルカル、alkalはアルカリ性を、オイド、oidは似ているという意味です。ヒューマノイドも同じような合成語)。とはいっても、じつはアルカロイドにはきちんとした定義はありません。アルカロイドという言葉は、そこらへんでよく聞く言葉なのですが、結構エエカゲンナ内容の言葉なのです。

さて、ヒョンナことで毒のシリーズになりましたが、最後の今回、チョイト長くなりますが、多くの生き物が体内で作り出す(したがって、男も女もつくる)毒の幾つかに付いて述べます。

1)アンモニア    

全ての細胞の中では常にアンモニアがつくられています。これが結構強い毒物です。私達脊椎動物の体内では特に多量に作られているので、これを放置しておけば命にかかわることになります。哺乳類では0.005ppmが致死量です。これはフグ毒よりも強く、人間が作り出した最悪の毒物として知られるダイオキシン並みの毒性を持っていることを意味しています。こんな毒物が、体内にウロウロしていたら、私たち自身がウロコキます。

こんなにもヤバイ物質が生じるのは、たんぱく質があるからです。たんぱく質は細胞内で、生命現象に関した重要でかつ多彩な役割を担っています。昔、ある人が「生命とはたんぱく質の存在状態である」と訳の分かったような分からないようなことをいいました。それほどたんぱく質は命にとって大切なものです。そのたんぱく質は、アミノ酸が連らなってできています。そしてアミノ酸は、α―ケト酸という有機酸とアンモニアとが結合したものです。α―ケト酸も、また、毒性を持っていますので、アミノ酸は毒と毒が結びついて生じた物質です。このような毒を持って毒を制した物質を生命活動に必須のものとして使ったことから、その後始末として生物は毒を処理せねばならなくなりました。

体内に存在するたんぱく質は、常に作られ常に壊されています(これを、代謝回転を受けているといいます)。生体内のある種のたんぱく質を仮定すると、その質と量は見掛けは変らないのですが、中身が違っています。流れている川では、川の見かけが変らないのですが、水そのものは変っていることと同様です。どんな生物のどんな物質も、こうした状態におかれています。これをチョット難しくいうと、動的平衡状態にあると表現します。体内に存在するたんぱく質が常に作られ常に壊されているように、たんぱく質つくっているアミノ酸もまた作られ壊されています。従って、毒物であるα−ケト酸とアンモニアが常に生じていますので、これを処理しなければなりません。α−ケト酸は呼吸により二酸化炭素と水に分解されますが、猛毒のアンモニアの処理方法は生物種によって違っています。ヒトでは肝臓でアンモニアを処理(解毒)します。アンモニアを二酸化炭素と結合させ極めて毒性の低い尿素として、腎臓をへて体外に排出されます。

アンモニアは水によく溶けますから、身のまわりに水が豊富なら(たとえば魚類)、そのまま垂れ流せばいいのです。ところが、私達哺乳類は水分供給が限られた陸地に住んでいますので、このようなややこしいことをしなければならないのです。動物にとって、体内で生じたアンモニアをどのように処理するかは、その動物種の生息環境と子孫の維持および個体の維持にかかわる大問題なのです。私達哺乳類は肝・腎があるからこそ、生きていられるのです。

因みに、尿素を作り出す経路を、尿素回路あるいはオルニチン回路といいます。このシステムは、細胞内で発見された最初のサイクリック(循環的)な経路です。発見者はハンス・アドルフ・クレブスというユダヤ系の人でドイツに住んでいましたが、このシステム発見後、ドイツはヒットラーの全盛期を迎えました。ナチスに追われイギリスに移り、酸素呼吸にかかわる重要な循環的なシステム(TCA回路、クエン酸回路、あるいはクレブス回路という)を発見し、ノーベル賞を得ました。

西洋人は、直線的な思考をします。最初が終わりで、終わりが最初という循環的な考え方は、西洋人は苦手のようです。尿素回路を発見したとき、クレブスが随分戸惑った様子を、彼自身が書いた伝記から窺い知ることが出来ます。

植物にとってもアンモニアは毒物であることに変りありません。たとえば、植物は根からアンモニアも吸収する事が出来ますが、体内に入ったアンモニアをそのままの状態で体内を輸送するのは危険ですから、根ですぐに硝酸イオンに変化して運びます。また、植物も代謝回転を行っていますから、細胞内でもアンモニアが生じますが、それがどのように処理されるのか分かりません。少なくとも私の現役時代には分かっていませんでした。急速に発展している今の生物学でも、恐らく分かっていないでしょう。植物塩基であるアルカロイドには、必ず窒素が含まれています。私は、これが植物にとってのアンモニアの解毒の形態ではないかと考えています。しかし、植物は多様な機能を持っていますから、アンモニアそのものが毒になるほどの濃度で生じないのかもしれません。

チョットついでの話。醤油は、今や世界の調味料となっています。醤油のほかに、日本人が作り出した世界的な調味料となっているものがあります。味の素です。味の素は、あまりにも味付けに有効なため、以前アメリカで随分たたかれました。 その尻馬に乗って、日本でも問題視されました。 味の素は、周知のように、コンブだしの研究から生じたものです。 物質名をグルタミン酸ソーダーといいます。 ソーダーはソーダ‐村の村長さんの名ではありません。 ナトリウムのことで、グルタミン酸ソーダーとは、グルタミン酸のナトリウム塩のことです。グルタミン酸はアミノ酸の一種で、数多いアミノ酸の中でもとりわけ重要なものです。肝機能の検査項目にGOTというのがあるのをご承知でしょう。 これは、グルタミン酸:オキサロ酢酸・トランスアミナーゼという酵素を検出しているのですが、こういう酵素が肝細胞のみならず全ての細胞中に存在していることは、グルタミン酸が細胞内で重要な働きをしていることを示唆しています。グルタミン酸は、ヒトを初め動物細胞内での、アミノ酸合成の中心的役割を演じているアミノ酸です。因みに、血液検査でGOTの値が高いことは、細胞(特に肝臓細胞)が崩壊していることを示しています。

このグルタミン酸は、酸の状態のときには、水にも良く溶けませんし、味の素の味がしません。 これを、苛性ソーダ‐で中和してゆくと、次第に水に解け始め、味の素の味がしてきます。

2)ビリルビン

私達背骨を持つ動物の共通の祖先は、海からタコやイカの祖先に追われて河に逃げ込んで「サカナ」になった生き物です。今から、約4億年前にその「サカナ」が上陸して、その後脊椎動物共通の祖先となったといわれています。そんな歴史を持つ脊椎動物は、酸素を体の隅々まで運ぶための赤血球という特別の細胞を持っています。赤血球の中には、以前述べたヘモグロビンと言うたんぱく質が沢山あって、それが酸素を運んでいます。生物の身体を構成する全てのものが動的平衡状態にあり、作られて壊されています。このような状態は、物質に限らず、細胞もまた同様に作られ壊されて、一定の状態に保たれています。私達の赤血球の数が一定であるのは、壊される数とつくられる数とのバランスが取れているためです。哺乳類の赤血球の寿命は約100日ですので、1日には多数の赤血球が壊れます。そのため、赤血球の中にあったヘモグロビンもまた壊されます。ヘモグロビンはたんぱく質とヘム核で構成されています。ヘモグロビンを作っているアミノ酸は、再利用されたり壊されたりします。ヘム核も同様の運命を辿ります。胆汁の中にはヘム核の分解物が再利用されて含まれています。ヘム核の分解物をビリルビンといいます。このビリルビンに毒作用があり、これも肝臓で処理(解毒)されます。

ヒトは誕生後約1週間経つと、生理的黄疸に陥ります。これの黄疸症状が激しいと、その後の発達に障害が生じます。脳の神経細胞の発達に影響を与えるのです。この黄疸の原因物質が、ヘモグロビン由来のヘム核の分解物であるビリルビンです。新生児の場合、出生と共に今まであったヘモグロビンを全部分解して、成人型のヘモグロビンに作り変えます。したがって、多量のビリルビンが短期間のうちに生じ体内を巡ることになります。これを処理できるのは、肝臓ですから、肝臓機能に衰えがあったり、ヘモグロビンの分解が多すぎたりすると速やかに処理できず、体中が長らく毒物にされされることになります。神経中枢は丁度その頃発達しつつありますから、その影響をモロに受けることになります。

私達の体内には、ヘモグロビンが多量に存在していますが、ヘム核はヘモグロビンに限らず、細胞内で重要な機能を担っている物質にもそれが存在していますので、それらの物質が代謝回転を受けると、やはりビリルビンが生じ、肝臓で処理されます。

チョットついでの話。ヘム核を鉄ポルフィリンといいます。このような言い方は、ポルフィリンという環状物質に鉄がついたことを表しています。ビリルビンはこのポルフィリン環が分解を受けて開いた恰好なのです。クロロフィル(葉緑素)はマグネシウムポルフィリンです。ヘムとクロロフィルは鉄とマグネシウムの違いだけではないのですが、急所の部分が極めて類似しています。周知のようにクロロフィルは植物(緑色植物)に特有の物質です。ポルフィリンはかたや緑物質になり、かたや赤い血の素となっているのです。植物と動物とで、こんなところにも類似性が見出されます。

3) ヴィタミンB12  

  人の体調は多くの物質によって支えられていますが、ごく微量でその効果を現している物質があります。 このような物質は沢山ありますが、ビタミンと総称される物質もその内の1つです。私達はビタミンを合成する能力を持っていませんので、食物として取り入れねばなりません。ビタミンには、水溶性のものと脂溶性のものがあります。ビタミンB12は水溶性の1つです。その水溶液は赤い色をしています。ビタミンB12の化学名を、シアノコバラミンといいます。シアノコバラミンという言い方は、ビタミンB12がシアン(青酸)とコバルト(金属)を含んだ有機化合物であることを表しています。ビタミンB12も体内で分解されますので、分解物として、その構成成分である青酸やコバルトが生じます。 青酸は、無論、毒物ですから、肝臓で解毒せねばなりません。 

コバルトは体内ではイオンとして存在しています。体内には、コバルト以外に生命維持に必要な金属イオンが数多く存在しています。たとえば、マグネシウムや亜鉛なんかもなくてはならない金属です。しかし、ありすぎるのも困ります。 一定の量を超えないように、速やかに処理されねばなりません。 コバルトのような金属分子の細胞内における問題には、量的な問題とともに別の問題も抱えることになります。コバルトには、放射能をもつものと待たぬものがあります。 自然界には、一定の割合で存在しています。もしも、放射性のコバルトが細胞内に入ったならば、普通のコバルトと同じように使われますから、たとえばビタミンB12 として働きつつ、放射線を出しつづけるという事態になります。かつて、大気中の核実験が頻繁に行われていた時、空気中の放射性コバルトの増加が問題になったことがありました。 放射性コバルトは、がん治療に使われるように、強力な放射能を出します。そんなものが、細胞内に存在していると、危険極まりないものを抱え込んだことになります。

)アセトアルデヒド

  混んだ電車にでも乗っていて、酔っ払いが傍に来ると、その吐く息で往生した経験を持った人は多いことでしょう。 酒を飲んだ人の息は、本人は気がつかないのですが、臭いものです。吐く息だけでなく、汗からも臭みが匂います。 酒飲みの臭さの素がアセトアルデヒドという物質です。酒(日本酒に限らず、酒類)には、アルコール(エチルアルコール)が含まれています。アルコールには薬理作用がありますから、アルコールが体内に入ると、分解を受けます。 つまり、解毒されているのです。その解毒(分解)の過程で生じるアセトアルデヒドがアルコールよりも遥かに強い薬理作用を持っています。アルデヒド類は、一般に、生物にとって有毒です。体内におけるこの濃度の上昇が、酒を飲んだときに現れる二日酔、頭痛、吐き気等の症状の原因物質といわれています。

   アルコールはアセトアルデヒドをへて、酢酸になり、呼吸の素材として使われ、水と炭酸ガス(二酸化炭素)になります。この解毒が、やはり、肝臓で行われます。 アルコールの解毒には、主たる過程とサブの過程の2つの過程が知られていますが、訓練でその作用が強くなるのは、サブの過程のほうです。それでは、酒を飲んでいるうちに酒に強くなるという事実を説明することが出来ません。 酒に強くなることは、アルコールの分解作用だけでなく、もっと複雑な要因が関与しているのです。

チョットついでの話

単にアルコールと言えば、通常はエチルアルコール(エタノール、酒精アルコール)を指しますが、アルコール類はエチルアルコールに限りません。メチルアルコール(メタノール、木精アルコール) もアルコールの1種です。戦後直ぐには、「メチル」入りの安い酒を飲んで、体を壊した人(死んだ人も含めて) が結構沢山いました。 目が見えなくなった人を、私は知っています。 「メチル」が体に悪いことは次のように説明されます。

アルコールからアセトアルデヒドが生じる分解過程で、働く酵素をアルコール脱水素酵素といいます。 酵素は、通常、基質特異性というのを持っていて、ある酵素が作用する物質が決まっていますが、その基質特異性に幅のある「ええ加減」な酵素もあります。 アルコール脱水素酵素もその1つで、この酵素はエチルアルコールに限って働くのでなく、メチルアルコールにも働いて、アルデヒドをつくります。「メチル」から生じるアルデヒドをホルムアルデヒドといいます。 これが、また猛毒です。ホルムアルデヒドの3%溶液をホルマリンといいます。 ホルマリンといえば、ご承知の人も多いでしょう。 最近は、ハウスシック (でしたか?  ホームシックではないでしょう)症候群の原因物質の1つとして、話題になっています。また、生物の個体あるいは器官や組織の保存にも使われてきたものです。 

上に述べてきたように、肝臓の機能は、主としてアンモニアやビリルビンを解毒することですが、それに限らず体内で生じるあらゆる毒を解毒することにあります。それ故、肝臓機能が不全になると、体内で生じる毒性物質の濃度が高まるので、全身的な症状が生じます。

5)活性酸素

   こんどは細胞そのものが持っている解毒作用のことです

私達は、現在、酸素がなければ生きてゆけません。私達の命の保持に必須の酸素は実は、毒物なのです。「いのち」が地球上に発生して以来約3億年間、生物は酸素のない状況下で過ごしていました。酸素が地球に出来始めたのは、地球が生まれて十数億年以上も経ってからです。地球の海にも大気にも酸素が満ちたのは、それから20億年以上もたった時であり、それは今から約10億年前といわれています。最初に地球に酸素を作り出したのは生き物で、その生き物をシアノバクテリアといいます(昔、これを藍藻といっていました)。シアノバクテリアのせいで、地球の環境条件が全く違った状態になっていたのですから、そのころ生きていた生物の多数がシアノバクテリアの出す毒物(酸素)によって死んでいったに違いありません。生物進化の長い歴史の殆どが、この毒物への対処に費やされています。酸素の毒性の除去方法を確立した生き物は、今度は多大なエネルギーを得ることになり、様々な生物となって地球上に満ち溢れ始めたのです。

現在酸素を必須のものとして利用する生物は、10億年以上にもわたる酸素との戦いに勝利した先祖の細胞のおかげです。現在酸素を必要とする生物の体内では、酸素は電子の受け取り手です。酸素は徐々に電子を受取り変化してゆきます。その過程で、有毒物質が生じます。これが活性酸素といわれる物質で、3種類あります。1つがスーパーオキサイドアニオンラジカルといわれるもの、他の2つがヒドロオキシアニオンラジカルと過酸化水素です。細胞内でこれら毒素を消すには、2つの方法があります。最も大切なものは細胞が作り出す酵素と呼ばれる物質で、もう1つ副次的なものはビタミンCのような物質によるものです。酵素は遺伝子の情報に従って作られるものなので、先祖の細胞の10億年以上にもわたる酸素との戦い(細胞進化)は、実はこの遺伝子の獲得経過だったといえます。

酵素にはスーパーオキサイドアニオンラジカルを消去するスーパーオキサイドデスムターゼ(SOD)と過酸化水素を消すカタラーゼがあります。酸素毒性を消去するその他の物質には、ビタミンCのほか現在マスコミ等で良く話題になっている緑黄色野菜に含まれる物質があります。活性酸素は、最近になって私達人間において悪の親玉のように話題になっています。今では、人の病気の原因を活性酸素の所為にする人が増えていますが、実は遥か大昔に「生命」は活性酸素という前代未聞の危機に曝されそれを克服していっていたのです。酸素が生き物にとって恐るべき毒物であることは今も昔も変わりはありませんが、現在の酸素呼吸をする生物は全てその毒性を消す酵素を持っているが故に、酸素を利用できるのです。そういう観点から言えば、エアロビックスはほどほどにということになります。因みに、エアロビックスのエアロビックはaerobicと綴り、空気とか酸素を意味する言葉です。

チョットついでの話

いまはあまり使われていないようですが、昔オキシフルという消毒薬がありました。オキシフルは過酸化水素の3%水溶液のことです。これで消毒することは、バイキン(酸素を使うことができるものもできないものも)に活性酸素を多量に与え、その毒性を利用して殺すことを意味しているのです。オキシフルのこの毒は、バイキンにのみ有効なわけがなく、私達の細胞も「やられる」はずですが、やられ方が違うのです。

傷口にオキシフルを塗ると、ブクブクと泡だったことを覚えていませんか。あれは、私達の中に存在しているカタラーゼがオキシフル(過酸化水素)に作用している状態を表しているのです。カタラーゼはヘム核をもつ酵素です。

酵素はたんぱく質で出来ており、一般的には熱に弱く、40℃を越えるとその機能を失い始めます。いつの頃だったか忘れましたが、私はこのカタラーゼを使って実験をしておりました。その時、酵素は熱に弱いことをこれで実証してみようと思い立ち、悪戯してみたのですが、その結果は常識通りではなく、カタラーゼは熱に結構強いのです。それでカタラーゼに興味を持ち、調べてみるとこれが様々な生き物に含まれていることが分かりました。勿論、植物にもあります。試しに、大根卸しにオキシフルをかけてみてください。盛んにバブルがはじけます。生物界に広く分布しているこの酵素の生体における役割は、当時、分かっておりませんでした。 カタラーゼの重要性が明らかになったのは、そんな遠い昔のことではありません。

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以上述べてきたように、私たち人間は、実は毒々しいのです。体内で常に毒を生産していたのです。 憧れの人が、実は、毒物生産人間だったのです。生産された毒は、尿として排泄しているのです。 こんなことを言えば、人間は万物の霊長と思っている人に水をかけるような行為になるでしょうか。 あるいは、若者にこんなことを知らせると、千年の恋も冷めるでしょうか。 やはり知らせない、あるいは知らないほうがいいでしょうか。 

尿とくれば、糞の話もしたくなります。段々品性が消失してきます。 というより、本来の品性が露出してきます。 このへんで止めた方がいいようです。 長らく、お世話様でした。長々と読んでくれて、おおきに。 

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