1.    リシンはヒマの種子のタンパク質

アメリカは、というよりもブッシュは、どうしてもイランはいらんらしく侵攻したくてうずうずしている様子です。 ブッシュが、彼自身の今までの不行跡の反動で、キリスト教原理主義者になったのか、あるいは米軍が新型爆弾でも開発して、その効果を確かめたくなったのでしょうか。原因は兎も角、何が何でもイランを悪者にして侵攻したくてうずうずしているように私には見えます。 こんどは、イランが猛毒のリシンを保持していたと報道されました。
 新聞報道されたリシンは、多分ricinでしょう。 Ricin はヒマ(トウゴマともいう。 Ricinus  commnis L )の種子が持っているたんぱく質です。ヒマから発見されたのでリシンと名付けられました。 毒性は通常LD50という方法であらわされます。これ(lethal dose 50)は毒物を複数のマウスに与え、その半数が死ぬ量を意味しています。よく知られている青酸カリのLD50は10mg/kgで、リシンのそれは 0.1-3μ/kg ですから、毒性は青酸カリの約1万倍です。 これだけ見れば、空恐ろしい感じですが、毒性試験は毒の与え方(たとえば経口投与か注射かなど)によって異なりますので、数字そのものだけで比較するわけには行きません。


 ヒマ(写真)は成長すると、その背丈は3mほどになります。ヤツデのような葉をつけますが、最初からヤツデのようなものが出るのではなく、芽生えの最初に出る葉は一方のみが伸びた菱形のような形をしています。それが成長するにしたがって出てくる葉は次第にヤツデ型に変化してゆきます。丈夫な植物で、これにつく昆虫もあまりいないため、ほおって置いても種子の収量は落ちません。リシンは種子にあると述べましたが、トリカブトの毒(LD500.1mg/kg程度です)がその全体にあるように、ヒマ毒も恐らくその全身にあるため、その毒性を消す能力を持つ生物種が少ないのでしょう。
 種子の主成分は脂質(脂肪)で、工業用の各種あぶらの原料になっています。そのため、戦争中は空き地で栽培されたこともあり、記憶の底に残っている人もいると思います。因みに、少し前までは、車のトルコン油として使われていましたが、現在の事は知りません。
 ヒマの油脂で最もなじみが深いのは下剤としてのひまし油でしょう。ヒマの細胞中に保存されている状態の脂質は固形(これを脂肪とか中性脂肪とか言う)ですが、工業的に搾り出す時にあぶら状になるのでしょう。このあぶらの主成分は、リシノール酸という脂肪酸です。これもチョット変った脂肪酸で、私達の細胞はこれを使うことが出来ません。そのため(かどうか分かりませんが)、リシノール酸は私達の体内に入りにくく、表面活性剤的役割を果たすため、下剤として有効なのでしょう。
 ヒマは、私の長年の実験材料でした。来る日も来る日もヒマの種子を育てては潰していました。つまり、私の長年やってきたことは暇つぶしでした。
                                                      佐藤八十八
                                                  sato88@m1.skz.or.jp


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